2022.9.1(旧暦8月6日)溽暑じょくしょよ、さらば!」。独房日記⑭「…悲しい飲まされ方」

2022.9.1(旧暦8月6日)溽暑じょくしょ)よ、さらば!」。独房日記⑭「…悲しい飲まされ方」

 相変わらずのコロナの恐怖と不安の中で、世の中の許し難い不正義が次々とニュースで伝えられる度に怒りを感じているのですが…、何が何だか、命の危険を伴う等と言う耐え難い暑さの夏に見舞われて、そんな事より何よりも、我が身の保身…。高齢のせいもありますが、私は、正直ヘトヘトで、くたばって仕舞いそうな、これまでで最も辛い8月だった様な気がしました。
 皆様におかれましても、ご無事でお元気でいらっしゃる事を願っておりますが…、それこそ、知り合いが使っている言葉を借りますと、このブログは、「私と皆様との生存確認」の気持ちで書いております。
今月10日は仲秋の名月、良夜です。9月は、月をめでる月でもあります。

     貧しくも富めるも良夜りょうや酒を酌め     ひろし
    
 兎にも角にも、何とか生きさせて頂いている事に感謝をするばかりですが、少し前より気になる事のひとつに、あれやこれやがあり過ぎる世の中の混乱のせいでしょう、ほんの少し前の事でも、恐ろしい程、記憶の外になっていて、すぐに忘れて仕舞っている事です。

 もっと恐いと思うのは、心の余裕がない為、自分の保身以外の事には思いが及ばないと言う、料簡(りょうけん)の狭さへの恐れを感じたりもします。
そんな時代ですから、私のえん罪の事も、私が被害者となって10年も昔の話となり、多くの方にとっても、過去の出来事になって行く事が、悲しく悔しい事と思っております。
 私は幸いにも、多くの支援者の皆さんのお陰で、最高裁で奇跡とも言われる程の逆転無罪を勝ちとる事が出来ましたが、濡れ衣を晴らせたとは言え、もともと、私のケースは、始めから警察官のでっち上げで犯人にされ、その後は、あってはならない、信じられない不正義な司法の、「有罪へのエスカレーター」に強引に乗せられたものです。

 えん罪は、私だけの事ではなく、多くの善良な市民が被害にあっている事が判り、このブログも、私のあとに被害者が出ない事を願い、えん罪を出さないで欲しいと言う切なる思いから、ご迷惑ながら、しつこく発信させてもらっています。

 ひと度、えん罪被害者にされると、人権を全く無くし、それ迄の人生も、その後の人生も失って仕舞い、それは、本人だけでなく、家族や多くの方々にも被害が及ぶ、恐ろしいものです。

「警察、検察、裁判官による犯罪です!!許されません」
 これは、広島地裁で、証拠もないのに、「懲役1年、執行猶予3年」の、信じられない有罪判決を受けたあと、記者会見で、私が怒りに震えながら訴えた言葉でした。
 「えん罪は人災です。」改めて、冤罪を出さないで欲しいと訴えます。

 老婆心ながら、宮沢賢治が、大正時代に「どんぐりと山猫」という短編作品で、間違っている司法のありさまをわかりやすく書いています。今も昔も、全く、その通り・・・。宮沢賢治は凄いと、感服する次第です。短編ですが、改めて、この作品を読んで頂ければ面白いと思います。大正時代に宮沢賢治が指摘した通りなのです…。いや、今の司法は、もっと、おかしくなっているのでは…?と思います。

     改めて、四畳半独房日記・補足・備忘録⑭「思い出しても悲しい飲まされ方…」
(これは、私が体験した特異で嫌な記憶を、正しく記録に残しておきたいと言う思いから書き綴っています。)

 毎日、午後3時頃に聞こえてくる奇妙な「ガサガサ、パリパリ…」の音は、留置場に入っている容疑者が飲まなければならない薬を、刑務官が小さな容器に詰め替える作業の音だった訳ですが、この薬は、警察官が、病院に行って、もらって来てくれたものです。

 留置場に入れられた時、「飲まなければいけない薬があるか」と聞かれ、私は血圧の薬を飲んでいましたから、「○○病院で血圧の薬を処方されています」と言いますと、警察官が、病院へ行って訳を話し、薬をもらって来てくれると言うのです。しかし、それには、大変な抵抗を感じました。それは、私は、お金を盗っていないのに、不当逮捕されている訳で、自己防衛本能と言いましょうか、警察に逮捕されている事が、病院の先生や看護師さんに伝わる事が、恐ろしくて、嫌だという気持ちで一杯だったからです。
(あとで判った事ですが、実は、薬代は、私が払わなくてよかったのです。)

 さて、その薬を飲まされる姿は、屈辱的で、恥ずかしい心理状態だったと、悲しく思い出されます。
 私は鉄格子の中に囚われの身ですから、刑務官が薬の入った容器と、白湯(さゆ)の入ったコップを持って来て、房の鉄格子の下の方にある、弁当等を出し入れする小さな扉を開けて、まず、白湯の入ったコップを差し入れてくれます。そして「口を大きく開けろ!」と命じます。私が口を開けると「もっと大きく開けろ、薬が飲めんど!!」。命じられるまま、口を精一杯大きく開けると、口の中を覗き、チェックをした後、「舌を出せ!!」と言って、私が舌を出して「アッカンベー」をする様な格好の口の中の舌の上へ、薬の容器から取り出した薬を投げ込みます。そして、「水を飲め」、と命じられて、薬を白湯で飲み込む訳ですが、薬を飲んだ後、刑務官は再び「口を開けろ!」、そして「舌を出せ!!」と言って、口の中をチェックして、薬を飲んだ事を確認します。これら一連の私の格好は、想像したくもない屈辱的な悲しい心理状態でした。その屈辱的な思いを跳ね返す為に、刑務官がいつもの様に「舌を出せ!!」と命令すると、私は心の中で「シタ●●は出せるか!!下を出したら、猥褻物陳列罪じゃ…」と思って、心の中で、虚しい抵抗をした事を思い出します。

 さて、次回は、辛く歯痒い留置場で唯一の愉しみ、朝・昼・晩のおいしかった三度の食事…。ある日のメニューを、当時のメモより紹介します。

 そう言えば、窃盗犯の濡れ衣を着せれられたのが、2012年10月11日。事件があったとされる日より10年になります。しかし、10月は、何年経っても、私だけでなく、家族にとっても、今でも、とても辛い10月…です。

     昨日今日さらに明日へ鰯雲     ひろし
     夜毎よごと逢ふ憎っくき月とむかひ酒    ひろし

 呉々もお体ご自愛ください。                   煙石博

2022年8月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : masayukien