2022.11.1(旧暦10.8) 早い亥(い)の子、炉開きでした。四畳半独房日記⑯「署長巡回!!」

2022.11.1(旧暦10.8) 早い亥(い)の子、炉開きでした。四畳半独房日記⑯「署長巡回!!」

     修羅の世を置き去り秋のまつりつ   ひろし

 実りの秋10月の、町や村の秋祭りが終わり、月が変わって、早くも11月となりました。そして、7日(月)は立冬。暦は急ぎ足で冬を告げますが、自然界は駆け足でやって来そうな冬を前に、これから晩秋のクライマックスを迎えるのが11月…でしょうか。
 

「枕草子」の最初の段には「秋は夕暮れ。…」とあって、山へ沈もうとする夕日を背に、からすや雁が群れなしてゆく夕暮れの風情をたたえ、秋の趣(おもむき)は、夕暮れに限るとしているのですが、日本の古(いにしえ)より、誰もが、しみじみとものさびしい情緒を愛し、多くの和歌や俳句にも詠まれてきました。

     此道や行く人なしに秋の暮   芭蕉

 立冬を過ぎると、冬の足音も気になるところですが、時に、冷たい風も吹かず、忘れていた春の陽気を思い出させる、穏やかで暖かい「小春」「小春びより」の日々も、嬉しく有難く、刻(とき)を忘れ、ホッとさせてくれる事でしょうが、異常気象の昨今、今年はどうでしょうか。
 そう言えば、私も、広島県内の瀬戸の島、能美島の温泉で詠んだ若き日の拙句を思い出しました。

     海鳥うみどりの恋も育てし瀬戸小春   ひろし

 そんな穏やかな日々の中で、突然に冬の寒さが襲って来る事があるのが11月ですので、油断なりませんが、そう言う寒さの事を、広島の方言で「びったれおどし」と言います。
びったれは、「だらしのない者、ものぐさな者」と言う意味でしょうか。冬の準備をしないでいる、ものぐさで、だらしない人が突然の寒さにびっくりして慌(あわ)てるので、「びったれおどし」と表現したのでしょう。県北の中国山地では、早い初雪の事を「びったれおどし」と言った様です。「びったれおどし」にご用心!!

 ところで、今年は、10月の早くから、寒暖差が大きく寒さを感じる日が多くなって、少し慌てましたが、旧暦の暦を見ていて気付いた事に、旧暦の亥の子餅、炉開き(冬になって炉を使い始める日。茶の湯で、夏の風炉(ふろ)をしまい、火を使う炉を使い始める日)が、例年より早い事でした。

 旧暦の亥の子餅、炉開きは、例年だと、たいがい11月半ばか、それ以降で、たまに、11月上旬の日にあたる事もありますが、過去25年を調べてみると、今年が最も早く、10月25日(火)でした。つまり、日本の自然暦とも言える旧暦で教えられる事は、今年は、寒さが早くやって来る確率が高いのでは…と、観察していると、何となく、その様な感じになっている様に思います。
 今年もそうでしたが、我が家では、毎年、旧暦の亥の子餅、炉開きの日に暖房器具を出す事にしています。

     生くるべく山河大地の冬支度   ひろし

            改めて、四畳半独房日記・補足・備忘録⑯「署長巡回!!」
(これは、私が体験した特異で嫌な記憶を、正しく記録に残しておきたいと言う思いから書き綴っています。)
 月曜から金曜まで、午後になると毎日あったのでしょう、(私も、検察や取り調べ室に行かされて房に居ない事も多いので判らない部分ですが)署長の巡回があった様です。天井が高い(そう感じていたのかも知れませんが)静かな留置場に「署長巡回!!」と張り詰めた声が響くと、勤務についている数人の刑務官が、留置場の鉄格子の入り口前に集合、整列して、敬礼をしていたかどうか…署長を迎え入れて…、各房の者へ、署長が、それぞれ声を掛けます。

 留置場に入れられて10日余りのちの10月22日(月)の私のメモに、午後2時10分、署長巡回。私の鉄格子の前に立って、「体調…大丈夫ですか?」と、小さな声…。実はこの時、心の中には怒りが渦巻いていて、「大丈夫じゃないよっ!!ええ(いい)わけないじゃろうがっ!!私は金を盗ってもいないのに、こんなひどい目に合わされて、どう言う事なんですかっ!!」(怒り)と、声を荒げて訴えたかったのですが…気分が滅入ってしまっていて、私にその勇気も無く、「はい…大丈夫です」と、従順に答えるだけ…」とありました。精も根も尽きていたと思います。

 その翌日、10月23日にも、午後1時5分、署長の巡回とあり、署長が部屋ごとに声を掛けて来て、私の所でも「寒くないですか?」…私は、この日も、何故か従順に、「はい…寒くありません。」と答えながら、心の中では、「ワシの(私の)心の中は寒過ぎるんじゃ!!」と、叫びたかった事を思い出します。今、思っても、泣きたい程の淋しさです。
              ――つづく――

 これは、本を読んで知った関東地方の話ですが、11月の酉(とり)の日に、東京・浅草の鷲(おおとり)神社等、各地で開かれる「酉の市」にまつわる言われです。
 この「酉の市」は、露店で、熊手やお多福などを売りますが、鳥が酉(とり)に通じ、それが「取り」…「取る」とシャレて縁起をかついだ、商売繁盛のお祭りだそうです。

 浅草は、その昔、遊郭を控えて盛んだったので、正岡子規に、

     吉原ではぐれし人や酉の市   子規

 高浜虚子に、

     此頃の吉原知らず酉の市   虚子

 この「酉の市」は、大抵は11月に2回ですが、今年は、三の酉があって、一の酉、二の酉、三の酉と、3回ある年は、火事が多いと言われたそうです。

 私は、これを長い間観察して来ましたが、広島でも、11月に三の酉がある年は、何となく火事が多かった様に思います。つまり、早くから寒さがやって来て、火を使う事が多いからだろうと、…思ったりします。

     妻の言ふ日暮ひぐれ日に日に早く秋   ひろし
     昼酒をひとりたのしむ冬はじめ   ひろし

 寒さに向かいますが、火の用心と、呉々もお体お大事になさってください。

                         煙石 博

2022年10月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : masayukien