2022.7.1(旧暦6月3日)「憂いを払う玉箒たまばはき」。独房日記⑫「もうひとつの彫物」

2022.7.1(旧暦6月3日)「憂いを払う玉箒ばはき」。独房日記⑫「もうひとつの彫物」

 あれやこれやと暗い話が次から次へと起きて、まるで、嵐の中で、小舟に乗っている様な、大変な世の中に生きている…そんなご時世に、私のブログに目を落として頂くのも申し訳けない様な気がします。

 それにしても、長いコロナの社会不安のストレスに加えて、ロシアによる、無体なウクライナへの軍事侵攻に、怒りを越えた行き場の無い憤りにいらだつ日々…。さらに、ここに来て、何も彼も、値上げ値上げと、私共の生活を直撃する「値上げラッシュ!」。
 しかも、その値上げの先き行きも不透明な事が、心に重くのしかかっていますが、これに加えて、円安が及ぼす、あれやこれや、これもどうなるものか…(6月28日現在)

 フーテンの寅は昭和やバナナ買ひ   ひろし

 とにかく、日本のみならず、世界の行く末まで案じられる今日この頃で、「山よりでっかい猪(しし)は出ん‼」と、意識を鼓舞してみましても、気分は晴れそうにありません。

 ま、あれこれ考えても、すぐに、どうにかなるものでは無いものが多く、『たまごの殻(から)で、海を渡る』つまり、一寸法師よろしく、タマゴの殻を舟にして、海を渡る事は出来ない。
もっと、わかりやすいのは、『こんにゃくで石垣を築く』これも、出来そうも無い。いや、出来ない事と悟って、平常心を取り戻し、ここは、親鸞上人の『明日(あす)ありと、思う心の仇桜(あだざくら)、夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは』(今日は美しく咲きほこっている桜も、夜に嵐が吹けば、一夜にして、はかなく散ってしまう。今日は元気でも、明日はどうなるかわからないのが、私共の命…。)と言う短歌を思い起こし、とにかく、一日一日を有り難く精一杯生きる事に…。
「明日は明日、今日は今日。明日は、明日の神が守ってくれる」事と信じて、今宵も「酒は、憂いを払う玉箒(たまばはき)」…ささやかな?晩酌に酔わせて頂くひとときに、感謝。

     枝豆やひとまず畳む世事俗塵   ひろし

 一日も早く、穏やかな日々が戻って来る事を願うばかりです。

          改めて、四畳半独房日記・補足・備忘録⑫「もうひとつの彫物」
(これは、私が体験した特異で嫌な記憶を、正しく記録に残しておきたいと言う思いから書き綴っています。)

 何が何だか、私は何も悪い事はしていないのに、身に覚えの無い(結局、金を盗った証拠も無いのに)「置き引き」、つまり、客が忘れたとする金(66600円)を盗ったと、窃盗犯の濡れ衣をきせられ、2012年10月11日の午前11時30分に、自宅で逮捕されて、家の近くの広島県警南警察署(広島市南区丹那町)の、留置場の鉄格子の中へ押し込まれました。
 この日より28日間、私は名前を呼ばれる事は無く、「13号」と呼ばれて、冤罪被害者の苦闘を強いられる事になりました。
 私は、囚われの身で、細かくチェックする事は出来ませんでしたが、留置場の「房」は、6つか7つあった様で、入口より、1号、2号とあり、3号はあったのかどうかわかりませんが、4号がなくて、いきなり、私が入れられた「13号」があり、その次の房は5号、6号…7号があったかどうか…あった様な…。
 とにかく、以前のブログにも書きましたが、自白を強要する為にと思われる様な、薄気味悪い4畳余りの部屋で、お金を盗ってもいないのに、私には納得出来ない自白や示談を強要され、28日間を、苦しみながら闘い、耐え忍びました。

 実は、私のえん罪被害より少し前にえん罪被害者となり、私と同じ様に奇跡ともいわれる雪冤(せつえん)、えん罪を晴らし、無罪を勝ちとられた、元厚生労働省次官の村木厚子さんも、大阪拘置所で「13番」(こちらは“号”ではなく“番”でしたが…)と言う番号が与えられたそうです。私と同じ「13」…「13」に込められた意味…何かある様にも思えてなりません。

 さて、今回は、私の独房メモに残していた「彫物(ほりもの)」の事を思い出します。
一つは、以前のブログに書きましたが、倶利伽羅紋紋の様な立派な入れ墨を入れた方(これは、風呂に入っている様子が、こちらの房から見えるので、見るとはなく見て、確認出来たものです)もあって、その方だったかもしれませんが、しばらく留置場に居たあと、独房を出て行く日に、各房の中の者へ、それぞれ、「お世話になりました。」と、まるで、亡くなった、あの高倉健さんの様な感じで、静かに挨拶をされ、留置場を出て行かれたのも忘れる事が出来ません。
 そして、私は、もう一つの「彫物」を発見していました。それは、私が横になって寝ている時に発見した、独房「13号」の壁に残された「彫物」で、通路側に近い壁の下の方に「〇〇組〇〇」と、コンクリートの壁に、何を使って彫り込んだものか…そんなものは、鉄格子の中には持ち込めるとは思えませんが、誰も気付く事はほとんど無く残されていたものでしょう。房に入る時、毎回、身体検査もされるのに、さらに、刑務官の監視の目もあるのに…何故、その目を搔い潜(くぐ)ってまで、そんな「彫物」を残したか…ご本人の深い思いがあっての事と…思いを馳(は)せる「彫物」でした。
 さまざまな事も思い出しながら、この稿を書き終えて…疲れ…ました。

 尚、この南警察署は、現在、南区出汐町の、県立広島工業高校、県立広島皆実高校の近く、元陸軍被服支廠の北側に、新庁舎の新築工事が順調に進められており、来年の7月31日工事完了の予定だそうです。
 独房日記「毎日、午後3時…の奇妙な○○」と言う話は…次号にて!。

 ところで、我が家で育てている野菊の一部が、今年も、時季を間違えて、6月初めから咲き、特に今年は、毎年秋にしか咲かない普通の菊の一部も、5月に蕾がついて、はやばや6月25日に咲きました。これらも、以前から気がついている、大変気がかりな異常気象の影響のひとつだと思っています。

     噴水の翼の欲しげなりし空   ひろし

お体呉々もご自愛下さい。                       煙石博

2022年7月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : masayukien