冤罪 煙石博さんの広島高裁控訴審公判の経過
広島高等裁判所控訴審第4回公判まで
2014年10月11日
煙石博さんの無罪を勝ちとる会
事件は
2012年
9月24日 煙石博さんは家の近くの広島銀行大河支店に預金を下ろしに行った。
10月11日 煙石博さんの自宅に広島南警察署の刑事2人が来て、「お前は広島銀行大河支店で人が忘れた封筒を盗って、封筒からお金を抜き取り、左手で左胸のポケットにねじこんだ。防犯カメラに証拠が残っている」
として逮捕状も示さず逮捕、南警察署に連行、留置される。
煙石博さんは盗っていないと、無実を主張するが、警察の取り調べでは、防犯カメラの映像を見せることなく送検される。
11月 1日 起訴される。
12月 5日 広島地方裁判所、第1回公判 無罪を主張。
2013年
この間、12回の公判 あり、無実を一貫して主張する。
11月27日 広島地方裁判所、第14回公判で「懲役1年、執行猶予3年」の不当判決。
即日 控訴する。
2014年
5月27日 広島高等裁判所控訴審第1回公判 無実を主張。
争点は
Ⅰ 被害者が記帳台に置いた封筒に現金66,600円が在中していたか?
Ⅱ 被告人がこの現金在中の封筒を窃取したと認められるか?
Ⅰ 被害者が記帳台に置いた封筒に現金66,600円が在中していたか?
一審判決は
本件当日の朝、自宅を出る前に本件封筒の中に現金が入っているのを目視で確認したとの被害者の供述は、これを信用することができる。(弁護人が供述の変遷等として指摘する部分は、いずれもこの供述の根幹部分に関わるものではない。)被害者が本件封筒を置き忘れた時点で、本件封筒に現金が在中していたとの事実が認められる。
控訴趣意書では、
被害者は原審(一審)公判において偽証をしていることが判明した。
すなわち、被害者は2年前(2010年)に広島に帰って来た旨証言したが、これは真っ赤な嘘であり、被害者は平成17年(2005年)5月12日から広島市南区内に居住していた。
(弁第1号証 被害者の所属する会社の登記簿謄本 証拠請求)
広島高裁控訴審 裁判所は、
被害者が平成17年(2005年)5月12日から現住所に居住しているとする被害者の所属する会社の登記簿謄本を証拠として採用。
控訴審第4回公判での弁護人の弁論 (弁護人の弁論から)
証拠採用された鑑定書と第2回公判による鑑定人の証言によれば、本件封筒の表面は均等であり、硬貨が挿入されていたとの痕跡は確認できなかったこと。
原審において本件封筒内に現金6万6600円等が在中していた旨証言した被害者は、平成17年(2005年)5月12日から広島市南区内に居住していたにもかかわらず、2年前(2010年)に広島に帰ってきた旨偽証をしており、被害者の証言には信用性が認められないことなどから、そもそも本件封筒内には現金6万6600円は在中していなかったものと認められる。
Ⅱ 被告人がこの現金在中の封筒を窃取したと認められるか?
一審判決は
防犯カメラの映像によれば、
1 被害者は、9時20分11秒頃、本件記帳台での作業を終えて窓口に向かう際、本件記帳台の上に本件封筒を置き忘れたものと認められる。この際、封筒には現金及び振込用紙が入っていた。
2 9時36分10秒頃、本件支店の従業員は、本件記帳台の上に本件封筒が置かれているのを発見した。
この際、封筒の中に入っていたのは振込用紙のみであり、現金は入っていなかったと認められる。
3 被害者が本件封筒を置き忘れてから、本件支店の従業員が本件封筒を見つけるまでの間、本件記帳台の上面に触れた人物は、被告人のみである。
前記1及び2によれば、何者かが本件封筒から現金を抜き取った事実が認められるところ、防犯カメラの映像によれば、現金を抜き取ることが可能であったのは被告人しかいないことになる。被告人が本件封筒を窃取したという事実が強く推認される。
弁護人が指摘する点を踏まえて防犯カメラの映像を精査しても、上記の推認を妨げる証拠は見当たらない。被告人が本件封筒を窃取したことが認められる。
控訴趣意書では、
原(一審)判決は、証拠調べ決定しておらず、かつ証拠調べをしていないものを事実認定の資料とし、その結果被告人を有罪とした。
従って、原判決には、結審後、弁論再開手続きを取らず、証拠調べ決定しておらず、かつ証拠調べをしていないものを有罪認定の資料とした訴訟手続きの法令違反がある。
煙石博・弁護側が私的に鑑定を専門にしている鑑定会社に依頼して作成した鑑定書の結果、原審の事実認定は誤りであることが判明した。
被告人は、本件封筒には、一度も接触していなかったことが判明した。
私的鑑定書を証拠として採用して戴くようお願いした。
広島高裁控訴審 裁判所は、
私的鑑定書を作成した鑑定人を証人として呼ぶことを採用。(第1回公判)
第2回公判、第3回公判での、証人尋問の結果、鑑定書、鑑定補充書及びCD-Rを証拠として採用。(第3回公判)
控訴審第4回公判での弁護人の弁論 (弁護人の弁論から)
第1 弁論の趣旨
被告人は無罪である。
第2 事実関係
控訴審第2回公判、第3回公判で取り調べ済みの鑑定書、鑑定補充書及びCD-Rによれば、被告人は、原審の罪となるべき事実に摘示された振込用紙2枚在中の封筒1通(以下、「本件封筒」という)に触れておらず、従って、被告人が本件封筒を窃取していないことは明らかである。
1 まず鑑定書を作成した鑑定人の証言及び鑑定人作成の証拠の信用性について検討するに、第2回公判における鑑定人証言及び鑑定書によれば、鑑定人は多数の画像解析の経験を有し、 しかも捜査機関側からの鑑定嘱託も、裁判所からの鑑定嘱託も、弁護人側からの鑑定嘱託も受諾する公平な立場にあること、他の関係証拠や証拠以外のものは原則として排除し、画像解析専門家としてほぼ防犯カメラ映像を解析した結果のみに基づいて判断していること、鑑定人が行ったのは、一般に用いられている幾何変換、画像化、ガウス分散、差分抽出法、色濃度等高線化などの手法を用い、誰にでも購入可能なソフトを用いて行った容易に再現可能な鑑定であることが認められる。
また、鑑定書は、鑑定補助者を1人用いて1日8時間×約3週間をかけて慎重かつ綿密に、鑑定が行われた結果を書面化したものである。
鑑定人の第3回公判における証言、鑑定補充書及びCD-Rは、防犯カメラ映像の被告人、被害者及び銀行の警備員が撮影されている全フレームの画像解析を踏まえてなされ、または作成されたものである
従って、鑑定人の証言及び鑑定人作成の証拠の信用性は高い。
2 原判決が認定したとおり、被告人が本件封筒を窃取したとするならば、その後本件封筒内から現金6万6600円のみを抜き取り、その余の封筒等を記帳台上に戻したこととなるが、1秒ごとのコマ送りである防犯カメラの映像には被告人が本件封筒内から現金6万6600円を抜き取った状況は録画されていない。
本件封筒内から現金6万6600円を抜き取るには少なくとも6秒以上の時間を必要とするから(鑑定書、第2回公判における鑑定人の証言)、被告人が本件封筒内から現金6万6600円を抜き取つたのであれば、1秒ごとのコマ送りである防犯カメラの映像にも必ずその状況が録画されているはずである。
3 被害者が本件封筒を置き忘れた位置は、記帳台上の7時から9時の位置である(鑑定書、第3回公判における鑑定人の証言)。
これは、防犯カメラの映像のフレーム解析からも、差分抽出法からも導かれる結論である。
これに対して、被告人が撮影されている防犯カメラの映像のフレーム解析から、0時の位置に佇立している被告人の手指は、もっぱら被告人自身の前に集中している。
被告人が、記帳台上の7時から9時の位置にあつた本件封筒に触れるためには、少なくとも9時から10時の方向に移動する必要があるが、被告人は、足も下半身も体幹も0時の位置から移動していない(鑑定書、第2回公判における鑑定人の証言)。
被告人が、0時の位置に立ったまま、7時から8時の位置にあった本件封筒に触れるためには、前屈姿勢を取らなければならない。
しかし、被告人が撮影されたフレームには被告人が前屈姿勢を取っている場面は撮影されていない(鑑定書、第2回公判における鑑定人の証言)。
従って、本件封筒が置き忘れられた位置と被告人が佇立していた位置関係及び被告人が前屈姿勢を取っていない事実から、被告人は本件封筒に触れていないと言える。
4 被害者が本件封筒を置き忘れた位置の色差分を、被告人が記帳台に接近する前と被告人が記帳台から離れた後について抽出した結果、被告人が記帳台に接近する前と被告人が記帳台から離れた後で本件封筒の位置が変化していないことが判明した(鑑定書、第2回公判における鑑定人の証言)。
従って、被告人は本件封筒に触れてはいない。
5 被害者の手指及び銀行の警備員の手指の挙動から認められる本件封筒が置かれていた位置と、被告人の手指の挙動範囲の違いからも、被告人が本件封筒に触れていないことは明らかである(鑑定補充書及びCD-R、第3回公判における鑑定人の証言)。
すなわち、被害者及び銀行の警備員の手指の挙動から認められる本件封筒が置かれていた位置は記帳台の7時から9時までの範囲であるのに対し、被告人の手指の挙動範囲は10時から1時の範囲に限定されており、本件封筒が置かれていた位置と被告人の手指の挙動範囲が全く重ならない。
被告人の手指の位置を特定する位置として、鑑定人は、被告人の右肘の位置(指先よりも被告人から見て右に出ており被告人にとってもっとも不利である)を基点としてこの結論を導き出しているのであるから(第3回公判における鑑定人の証言)、被告人が本件封筒に触れていないことは明らかである。
また、これによって被告人の指紋が本件封筒から検出されていないことの説明も納得できる。仮に、被告人が本件封筒から紙幣や硬貨を抜き出したとしたら相当数の指紋が付着する筈だからである。
第3 結 論
被告人は、本件封筒を窃取していないどころか、本件封筒に触れていないことが明らかであるから、
被告人が無罪であることは明らかである。